New Relicデータ分析概要 - NRQL活用とインサイト獲得
システム運用において、大量の監視データから意味のある情報を見つけ出すことは重要な課題です。New Relicのデータ分析機能を使えば、単純なグラフ表示だけでなく、問題の原因を深く掘り下げて調べることができます。
New Relic Query Language(NRQL)という専用の言語を使って、アプリケーションやサーバーから集められた様々なデータを自由に検索・分析できます。このセクションでは、NRQLの基本的な使い方から、カスタムダッシュボードの作成、データの外部連携まで、段階的に学んでいきます。
データ分析で何ができるか
問題の早期発見
New Relicで集めたデータを分析することで、システムに問題が起きる前に兆候を見つけられます。例えば、Webサイトの応答時間が徐々に遅くなっている傾向や、エラーの発生パターンなどを把握できます。
ECサイトを例にすると、ページの読み込み時間とユーザーの行動データを組み合わせて分析することで、「どのページが遅いとユーザーが離脱しやすいか」「サーバーの負荷が高まる時間帯はいつか」といった実用的な情報を得られます。
データからパターンを見つける
過去のデータを調べることで、システムの動作パターンが理解できます。平日と休日でのアクセス数の違い、特定の機能でエラーが多く発生する条件、サーバーリソースの使用量変化など、運用に役立つ情報をデータから読み取れるでしょう。
NRQLの基本的な仕組み
NRQLとは何か
NRQL(New Relic Query Language)は、New Relicに蓄積されたデータを検索するための言語です。SQLと似た書き方で、プログラミングの経験があれば比較的理解しやすいでしょう。
例えば SELECT average(duration) FROM Transaction WHERE appName = 'MyApp' SINCE 1 hour ago
というクエリを書くと、「MyAppという名前のアプリケーションの過去1時間の平均応答時間」を調べることができます。
扱えるデータの種類
New Relicでは主に4つの種類のデータを扱います。
メトリクスは、CPU使用率やメモリ使用量など、数値で表される情報です。時間の経過とともに値が変化するデータで、サーバーの状態を監視する際によく使います。
イベントは、Webページへのアクセスやデータベースへの問い合わせなど、何かが発生したことを記録したデータです。いつ、何が、どこで起きたかの情報が含まれています。
ログは、アプリケーションが出力する文字情報です。エラーメッセージやアクセス記録などが該当します。
トレースは、一つのリクエストがシステム内でどのように処理されたかの経路情報です。複数のサービスをまたぐ処理の流れを追跡する際に使用します。
ダッシュボードでデータを見やすくする
見る人に合わせたダッシュボード作り
ダッシュボードを作る際は、誰が見るかを考えて構成することが大切です。開発者が見るなら技術的な詳細情報を中心に、管理者が見るなら全体の傾向やビジネスへの影響がわかる内容にします。
画面の上部に最も重要な情報を配置し、必要に応じて詳細画面に移動できるような構成にすると使いやすくなります。
データの更新速度を考える
ダッシュボードに表示するデータは、適切な間隔で更新されることが重要です。リアルタイムに近い情報が必要な監視項目もあれば、1日に数回更新すれば十分な項目もあります。
大量のデータを扱う場合は、表示する時間範囲やデータの集約方法を工夫することで、画面の表示速度を保ちながら必要な情報を提供できます。
より詳しい分析を行う
時系列でのデータ変化を見る
時間の経過とともにデータがどう変化するかを調べることで、システムの傾向がわかります。例えば、平日は応答時間が安定しているが、週末に遅くなる傾向があるといったパターンを発見できるでしょう。
過去の同じ時期と比較することで、システム改善の効果や性能劣化の原因を特定することも可能です。
グループ別の分析
全体のデータだけでなく、特定のグループに分けて分析することで、より詳細な問題を見つけられます。地域別、デバイス種類別、機能別など、様々な切り口でデータを分けて比較することで、特定の条件下でのみ発生する問題を発見できます。
データ分析を正しく行うために
データの品質を保つ
正確な分析を行うには、元になるデータが正しいことが重要です。データに異常な値が混じっていないか、必要な情報が欠けていないかを定期的にチェックしましょう。
チーム内で共通のルールを決めておくことで、誰が作ったダッシュボードや分析結果でも理解しやすくなります。
セキュリティへの配慮
分析に使うデータには重要な情報が含まれる可能性があります。適切なアクセス権限を設定し、必要な人だけがデータを見られるようにしましょう。また、個人情報などの取り扱いには特に注意が必要です。
このセクションの記事一覧
以下はNew Relicデータ分析に関する記事の完全なリストです。効果的な学習のための推奨順序で配置しています。
基礎知識
- NRQL基礎 - NRQLクエリ言語の基本構文と基礎的な分析テクニック
実装・活用
- カスタムダッシュボード作成 - 効果的なダッシュボード設計と実装方法
- カスタムイベント・属性 - 独自データの収集と活用戦略
高度な分析
- NRQL高度クエリ - 複雑な分析要件に対応する高度なクエリテクニック
- データエクスポート手法 - 外部システムとの連携とデータ活用の拡張
まとめ
New Relicのデータ分析機能を使うことで、システム監視で集めたデータから有用な情報を抽出できます。NRQLの基本的な使い方から、カスタムダッシュボードの作成、外部システムとの連携まで、段階的に学習することで、より詳細で実用的な分析が可能になります。
データ分析は問題の解決だけでなく、システム改善の方向性を決める際にも役立ちます。継続的に学習と実践を重ねることで、データを活用した運用改善につなげていけるでしょう。
関連記事: NRQL基礎関連記事: カスタムダッシュボード作成