New Relic Browser Agent概要 - リアルユーザーモニタリングの仕組み

Webアプリケーションのパフォーマンスを向上させるためには、実際のユーザーがどのような体験をしているかを正確に把握することが重要です。New Relic Browser Agentは、リアルユーザーモニタリング(RUM)を通じて、フロントエンドのパフォーマンスとユーザーエクスペリエンスを包括的に監視するJavaScriptベースのソリューションです。

Browser Agentとは

New Relic Browser Agentは、Webページに組み込まれる軽量なJavaScriptエージェントで、ユーザーのブラウザ上で動作してリアルタイムのパフォーマンスデータを収集します。従来のサーバーサイド監視では見えない、実際のユーザー体験を数値化し、フロントエンドの最適化に必要な洞察を提供します。

主要な価値提案

Browser Agentが提供する価値は、以下の4つの側面から理解できます。

実ユーザー体験の定量化により、理論値ではなく実際のユーザーが体験している読み込み時間やインタラクションレスポンスを測定できます。これにより、パフォーマンス改善の優先順位を正確に決定できます。

包括的な可視性を実現し、ページ読み込みからJavaScriptエラー、ユーザーインタラクションまで、フロントエンドで発生するあらゆる事象を一元的に監視します。

バックエンドとの関連性により、APMエージェントと連携することで、フロントエンドの問題がバックエンドのどの処理に起因するかを明確に特定できます。

ビジネス指標との連携では、パフォーマンス指標をコンバージョン率や売上など、ビジネス成果と関連付けて分析できます。

アーキテクチャの仕組み

Browser Agentのアーキテクチャは、5つの主要コンポーネントで構成されています。

データ収集層

パフォーマンスAPI連携では、ブラウザの標準APIであるNavigation Timing API、Performance Observer API、Resource Timing APIからパフォーマンスデータを自動収集します。これにより、ページ読み込み時間、リソースの取得時間、ユーザーインタラクションの応答時間などを精密に測定できます。

イベント監視機能により、JavaScriptエラー、Ajax通信、ユーザークリック、スクロールなどのブラウザイベントを自動的にキャプチャします。

データ処理層

収集されたローデータは、ブラウザ内で前処理され、効率的な形式に変換されます。この段階で、プライバシー設定に基づく情報のマスキングや、重複データの排除も実行されます。

通信層

処理されたデータは、HTTPSで暗号化されてNew Relicのデータ収集エンドポイントに送信されます。ネットワーク効率を最適化するため、データは適切な間隔でバッチ送信されます。

統合層

APMエージェントとの連携により、フロントエンドとバックエンドのトレーシング情報が相関付けられます。これにより、エンドツーエンドの性能分析が可能になります。

可視化層

収集されたデータは、New Relicプラットフォーム上でダッシュボード、アラート、詳細分析機能として提供されます。

監視対象の範囲

Browser Agentが監視する主要な領域は、以下の6つのカテゴリに分類されます。

ページパフォーマンス監視

Core Web Vitalsとして知られるGoogleの品質指標(LCP、INP、CLS)を自動測定し、SEOとユーザーエクスペリエンスの両面から重要な指標を提供します。

従来のパフォーマンス指標では、ページ読み込み時間、DOMContentLoaded、レンダリング完了時間など、基本的なパフォーマンス指標も継続監視します。

ユーザーインタラクション追跡

クリック、タップ、スクロール、キーボード入力などのユーザーアクションを詳細に追跡し、操作から応答までの時間を測定します。これにより、UIの応答性を定量的に評価できます。

ネットワーク監視

Ajax通信、Fetch API、WebSocketなどの非同期通信を監視し、APIレスポンス時間やエラー率を追跡します。

エラー監視

JavaScriptエラー、未処理の例外、Promiseのリジェクション、コンソールエラーなどを自動収集し、エラーの発生頻度と影響範囲を分析します。

リソース監視

CSS、JavaScript、画像、フォントなどの静的リソースの読み込み時間とステータスを監視し、リソース最適化の機会を特定します。

セッション分析

ユーザーセッションの長さ、ページビュー数、離脱率などのエンゲージメント指標を追跡し、ユーザー行動パターンを分析します。

導入方法の選択肢

Browser Agentの導入には、主に2つのアプローチがあります。

APM連携自動注入(推奨)

既にNew Relic APMエージェントを使用している場合、サーバーサイドから自動的にBrowser Agentスクリプトを注入できます。この方法では、設定管理が一元化され、フロントエンドとバックエンドの相関分析が自動的に有効になります。

Java、.NET、Node.js、Python、Ruby、PHP、Goなどの主要なAPMエージェントが自動注入に対応しています。

手動スニペット導入

スタンドアロンでBrowser Agentを使用する場合、HTMLページに直接JavaScriptスニペットを挿入します。この方法では、より詳細なカスタマイゼーションが可能で、静的サイトやCDN配信サイトでも導入できます。

パフォーマンスへの影響

Browser Agentは本番環境での使用を前提として設計されており、ページパフォーマンスへの影響を最小限に抑えています。

軽量設計により、圧縮後のスクリプトサイズは約15-20KB程度で、非同期読み込みによりページ描画をブロックしません。

効率的なデータ収集では、ブラウザのアイドル時間を活用してデータ処理を行い、ユーザーインタラクションを妨げないよう配慮されています。

適応的送信機能により、ネットワーク状況に応じてデータ送信頻度を自動調整し、帯域幅への影響を軽減します。

まとめ

このセクションの記事一覧

以下はブラウザ監視に関する記事の完全なリストです。効果的な学習のための推奨順序で配置しています。

基礎知識

基本的な監視設定

フレームワーク統合

  • React統合 - React アプリケーションでのBrowser Agent統合方法
  • Vue.js統合 - Vue.js アプリケーションでの監視設定
  • Angular統合 - Angular アプリケーションでのBrowser Agent実装

高度な設定とリファレンス

New Relic Browser Agentは、現代のWebアプリケーションにおいて不可欠なリアルユーザーモニタリングを実現する包括的なソリューションです。軽量でありながら強力な機能を提供し、フロントエンドパフォーマンスの可視化と最適化を支援します。

次のステップでは、SPA(Single Page Application)環境でのBrowser Agent設定方法について詳しく解説します。モダンなWebアプリケーションアーキテクチャにおける監視の特別な考慮事項と実装方法を学んでいきましょう。


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