Amazon S3概要 - オブジェクトストレージの基礎

Amazon S3(Simple Storage Service)は、AWSが提供するオブジェクトストレージサービスです。Webサイトの画像やファイル、アプリケーションのバックアップなど、あらゆる種類のデータを簡単に保存できます。容量制限がなく、必要に応じて自動的にスケールするため、スタートアップから大企業まで幅広く活用されています。

S3の基本概念

オブジェクトストレージとは

S3はオブジェクトストレージという仕組みを使っています。従来のファイルシステムとは異なり、ファイル(オブジェクト)を「バケット」という入れ物に保存します。

主要な要素

  • バケット: ファイルを入れる箱のようなもの
  • オブジェクト: 保存するファイル(画像、動画、文書など)
  • キー: ファイルの名前(バケット内で一意)

基本的な使い方

S3の操作はシンプルです:

  1. バケットを作る: データを入れる容器を作成
  2. ファイルをアップロード: バケットにファイルを保存
  3. ファイルをダウンロード: 必要な時にファイルを取得
bash
# AWS CLIでの基本操作
aws s3 mb s3://my-company-files
aws s3 cp photo.jpg s3://my-company-files/

ストレージクラスの種類

S3では、ファイルの使用頻度に応じて複数のストレージクラスを選択できます。

よく使うファイル用

S3 Standard

  • 使用場面: 頻繁にアクセスするファイル
  • 特徴: 最も高速、料金は高め
  • : Webサイトの画像、アプリのデータ

S3 Standard-IA

  • 使用場面: 月に数回アクセスするファイル
  • 特徴: Standardより安い、取得に少し料金がかかる
  • : バックアップファイル、古いログ

長期保存用

S3 Glacier

  • 使用場面: 年に数回程度のアクセス
  • 特徴: 非常に安い、取得に時間がかかる
  • : アーカイブデータ、法定保存書類

ストレージクラス比較

クラス用途料金アクセス速度
Standard頻繁利用即座
Standard-IA月数回即座
Glacier年数回数時間

S3のメリット

スケーラビリティ

容量の上限がありません。1GBから数ペタバイトまで、必要な分だけ使用できます。事前の容量計画や設定変更は不要です。

高い可用性

データは複数の場所に自動的にコピーされ、障害が発生してもデータが失われる心配がありません。

使いやすさ

AWSマネジメントコンソールから直感的に操作でき、プログラムからも簡単にアクセスできます。

従量課金

使った分だけの料金で、初期費用や固定費は発生しません。

S3のデメリット

ファイルシステムではない

従来のフォルダ構造とは異なるため、慣れが必要です。階層的なフォルダは存在せず、全てフラットな構造です。

取得に料金がかかる場合

一部のストレージクラスでは、ファイルを取得する際に追加料金が発生します。

地理的制約

バケットは特定のリージョンに作成され、そのリージョン内でのみ利用できます。

よくある使用例

Webサイトのファイル保存

  • 画像、CSS、JavaScriptファイルの配信
  • ユーザーがアップロードした写真や動画の保存

アプリケーションのバックアップ

  • データベースのバックアップ
  • アプリケーションの設定ファイル保存

ログの保存

  • アプリケーションのログファイル
  • アクセスログの長期保存

料金の仕組み

S3の料金は主に3つの要素で決まります:

保存料金

保存しているデータの量に基づく月額料金。ストレージクラスによって単価が異なります。

リクエスト料金

ファイルのアップロード・ダウンロード回数に基づく料金。頻繁にアクセスしない限り、通常は少額です。

データ転送料金

AWSの外部にデータを送信する場合の料金。AWS内のサービス間は無料です。

はじめの一歩

1. バケットの作成

AWSコンソールからバケットを作成します。名前はグローバルで一意である必要があります。

2. ファイルのアップロード

作成したバケットにファイルをアップロードして、S3の基本操作を体験しましょう。

3. 適切なストレージクラスの選択

ファイルの使用頻度を考えて、コストに見合うストレージクラスを選びます。

まとめ

Amazon S3は、シンプルながら強力なオブジェクトストレージサービスです。容量を気にせずファイルを保存でき、様々な用途に活用できます。

まずは少量のファイルから始めて、S3の使い勝手を体験することをおすすめします。慣れてきたら、ストレージクラスの使い分けやライフサイクル管理などの高度な機能も活用できるようになります。


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