Amazon EBS概要 - ブロックストレージの基礎
Amazon EBS(Elastic Block Store)は、EC2インスタンス用のストレージサービスです。パソコンのハードディスクやSSDのように、EC2インスタンスにマウントして使用します。データは永続的に保存され、インスタンスを停止してもデータは失われません。
EBSの基本概念
ブロックストレージとは
EBSは「ブロックストレージ」というタイプのストレージです。これは、従来のハードディスクと同じような使い方ができるストレージで、EC2インスタンスから見ると普通のディスクドライブのように見えます。
主な特徴
- 永続性: EC2インスタンスを停止してもデータは保持される
- 柔軟性: 容量やパフォーマンスを後から変更可能
- 独立性: EC2インスタンスとは独立して存在する
EC2との関係
EBSボリュームは、EC2インスタンスにアタッチ(取り付け)して使用します。一つのインスタンスに複数のEBSボリュームを付けることも可能です。
使用例
- ルートボリューム: OSが入っているメインのディスク
- データボリューム: データベースやファイルを保存する追加ディスク
- バックアップ: 定期的にスナップショットを取得してバックアップ
EBSボリュームタイプ
用途や性能要件に応じて、複数のボリュームタイプから選択できます。
汎用SSD (gp3/gp2)
gp3 - 最新の汎用SSD
- 用途: 一般的な用途全般
- 特徴: バランスの取れた性能とコスト
- 適用場面: Webサーバー、小規模データベース
gp2 - 従来の汎用SSD
- 用途: 一般的な用途(gp3への移行推奨)
- 特徴: 容量に比例してパフォーマンスが向上
- 注意: 新しいgp3の方がコストパフォーマンスが良い
高性能SSD (io1/io2)
- 用途: 高い性能が必要なアプリケーション
- 特徴: より高いIOPS(読み書き速度)を保証
- 適用場面: 大規模データベース、高負荷アプリケーション
大容量HDD (st1/sc1)
st1 - 高スループットHDD
- 用途: 大容量のデータ処理
- 特徴: 大量のデータを連続して読み書きする場合に効率的
- 適用場面: ビッグデータ処理、ログ解析
sc1 - 低頻度アクセスHDD
- 用途: アクセス頻度の低いデータ
- 特徴: 最も低コスト
- 適用場面: アーカイブ、バックアップデータ
ボリュームタイプ比較
タイプ | 用途 | 性能 | コスト | おすすめ度 |
---|---|---|---|---|
gp3 | 汎用 | 中 | 中 | ⭐⭐⭐ |
gp2 | 汎用(旧) | 中 | 中 | ⭐⭐ |
io1/io2 | 高性能 | 高 | 高 | ⭐ |
st1 | 大容量処理 | 特殊 | 低 | ⭐⭐ |
sc1 | アーカイブ | 低 | 最低 | ⭐ |
EBSのメリット
永続性とバックアップ
EC2インスタンスが停止してもデータは保持されます。また、スナップショット機能を使って、特定の時点でのデータのコピーを作成できます。
柔軟なサイズ変更
運用中でもボリュームサイズを拡張でき、ビジネスの成長に合わせて容量を調整できます。
高い可用性
EBSボリュームは、同一アベイラビリティゾーン内で自動的に複製されるため、ハードウェア故障からデータを保護します。
暗号化サポート
データを暗号化して保存でき、セキュリティ要件を満たせます。
EBSのデメリット
アベイラビリティゾーンの制約
EBSボリュームは、作成したアベイラビリティゾーン内でのみ使用できます。異なるゾーンのEC2インスタンスにはアタッチできません。
ネットワーク経由のアクセス
物理的なローカルストレージと比較して、わずかな遅延が発生します。ただし、一般的な用途では問題になりません。
コスト
使用していない時間でも、確保した容量分の料金が発生します。
適切なボリュームタイプの選び方
一般的な用途
gp3を選択することをおすすめします。バランスが良く、ほとんどの用途に適しています。
高性能が必要な場合
データベースや高負荷アプリケーションにはio1/io2を検討しましょう。
大容量データの処理
ビッグデータやログファイルの処理にはst1が適しています。
コスト重視
アクセス頻度の低いデータにはsc1でコストを削減できます。
スナップショット機能
スナップショットとは
EBSスナップショットは、特定時点でのボリュームのコピーです。バックアップや災害復旧に活用できます。
スナップショットの特徴
- 増分バックアップ: 変更部分のみを保存するため効率的
- 長期保存: 必要な期間だけ保存可能
- 復元: スナップショットから新しいボリュームを作成可能
基本的な使い方
- 手動スナップショット: 重要な変更前にその場で作成
- 定期スナップショット: 決まった間隔で自動作成
- 復元: 問題が発生した場合にスナップショットから復元
料金の仕組み
EBSの料金は主に2つの要素で決まります:
容量料金
確保した容量に基づく月額料金。実際の使用量ではなく、プロビジョニングした容量で計算されます。
スナップショット料金
スナップショットで保存されるデータ量に基づく料金。圧縮されるため、元のボリュームサイズより小さくなることが多いです。
はじめの一歩
1. ボリュームタイプの選択
最初はgp3を選んでおけば間違いありません。後から変更も可能です。
2. 適切なサイズの設定
初期は小さめにして、必要に応じて拡張するのがコスト効率的です。
3. スナップショットの設定
重要なデータは定期的なスナップショットを設定しましょう。
まとめ
Amazon EBSは、EC2インスタンスに安全で柔軟なストレージを提供するサービスです。一般的な用途ならgp3を選択し、特別な要件があれば他のタイプを検討しましょう。
スナップショット機能を活用してバックアップを取り、運用中にサイズ変更できる柔軟性を活かしてビジネスニーズに対応できます。まずは小さく始めて、必要に応じて拡張していくのがおすすめです。
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