AWS Database Migration Service (DMS) 概要
AWS Database Migration Service (DMS) は、データベースを AWS クラウドに簡単かつ安全に移行するためのマネージドサービスです。オンプレミスから AWS への移行だけでなく、AWS 内でのデータベース間移行やリアルタイムレプリケーションまで幅広くサポートしています。
DMS が解決する課題
従来のデータベース移行では、以下のような課題がありました:
- 移行中の長時間ダウンタイムが業務に与える影響
- データ変換やスキーマ変換の複雑さ
- 移行後のデータ整合性確認の困難さ
- 異なるデータベースエンジン間での移行の技術的ハードル
DMS はこれらの課題を解決し、効率的なデータベース移行を実現します。
主要な特徴
最小限のダウンタイム移行
DMS の最大の特徴は、移行中もソースデータベースを稼働状態に保てることです。継続的データレプリケーション機能により、移行期間中も業務を継続できます。
この仕組みにより、従来数日から数週間必要だった移行ダウンタイムを、数分から数時間に短縮できます。
幅広いデータベースサポート
以下の主要データベースエンジンに対応しています:
ソース | ターゲット | 移行タイプ |
---|---|---|
Oracle | Amazon RDS, Aurora | 同種・異種 |
SQL Server | Amazon RDS, Aurora | 同種・異種 |
MySQL | Amazon RDS, Aurora MySQL | 同種 |
PostgreSQL | Amazon RDS, Aurora PostgreSQL | 同種 |
MongoDB | DocumentDB | 異種 |
スキーマ変換サポート
AWS Schema Conversion Tool (SCT) との連携により、データベーススキーマの自動変換が可能です。これにより、Oracle から PostgreSQL など異なるエンジン間の移行を大幅に簡素化できます。
データ検証機能
移行されたデータの整合性を自動的に検証し、移行品質を保証します。行数比較、データ内容比較により、安全な移行を実現します。
主な活用シーン
クラウド移行プロジェクト
オンプレミスのデータベースを AWS に移行する際の中核サービスとして活用されます。特に以下のシナリオで効果的です:
- レガシーシステムのモダナイゼーション
- データセンターの撤去に伴うクラウド移行
- ディザスタリカバリ環境の構築
継続的データレプリケーション
移行後も継続的にデータを同期することで、以下のユースケースに対応できます:
- 開発・テスト環境へのデータ提供
- データ分析基盤への定期的データ投入
- ハイブリッド環境でのデータ一貫性維持
データベース統合
複数の小規模データベースを統合する際にも DMS が活用されています。分散したデータを一箇所に集約し、管理コストを削減できます。
導入メリット
運用コストの削減
手動でのデータ移行作業が不要になり、人的コストを大幅に削減できます。また、移行に伴うシステム停止時間の短縮により、機会損失も最小限に抑えられます。
移行リスクの軽減
自動化された移行プロセスにより、人的ミスを排除できます。データ検証機能により、移行品質も保証されます。
セキュリティの向上
転送中および保存時のデータ暗号化により、機密データも安全に移行できます。
移行戦略での位置づけ
DMS は AWS の移行戦略「6Rs」において、以下の役割を担います:
- Rehost (Lift and Shift): データベース層の移行
- Replatform: 一部最適化を伴う移行
- Refactor: アーキテクチャ変更を伴う移行でのデータ移行
特に段階的な移行戦略において、DMS の継続的レプリケーション機能は重要な役割を果たします。
料金体系
DMS は使用したレプリケーションインスタンスの稼働時間に基づいて課金されます。移行が完了すれば課金も停止するため、コスト効率的な移行が可能です。
まとめ
AWS Database Migration Service は、データベース移行の複雑さを大幅に軽減し、ビジネス継続性を保ちながら安全にクラウド移行を実現します。継続的レプリケーション、幅広いデータベースサポート、自動データ検証といった機能により、従来困難だった大規模データベース移行も効率的に実行できます。
クラウド移行を検討している組織にとって、DMS は移行リスクを最小化し、移行期間を短縮する重要なサービスといえるでしょう。