New Relicプラットフォーム概要 - 統合オブザーバビリティの全体像

現代のWebアプリケーションやクラウドインフラストラクチャは日々複雑化しており、システムの健全性を把握することがますます困難になっています。New Relicは、そうした課題を解決する統合オブザーバビリティプラットフォームです。アプリケーションからインフラストラクチャまで、システム全体を一元的に監視し、問題の早期発見と迅速な解決を支援します。

New Relicとは

New Relicは、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)から始まり、現在では包括的なオブザーバビリティプラットフォームとして進化したSaaSソリューションです。開発チームと運用チームが協力してシステムの可視性を高め、ユーザー体験の向上とビジネス成果の最大化を実現します。

核となる価値提案

New Relicが提供する主な価値は、以下の4つの柱から構成されています。

統合された可視性では、アプリケーション、インフラストラクチャ、デジタル顧客体験を単一のプラットフォームで監視できます。従来のように複数のツールを使い分ける必要がなく、データの一貫性と効率性が大幅に向上します。

リアルタイムインサイトにより、システムパフォーマンスとユーザー体験をリアルタイムで把握可能です。問題が発生した瞬間に検知し、影響が拡大する前に対処できます。

データドリブンな意思決定を支援する分析機能とアラート機能により、チームは推測ではなく実際のデータに基づいて判断を下せるようになります。

開発者の生産性向上を実現するツール群により、エンジニアリングチームはより良いソフトウェアをより迅速に提供できます。

主要な監視機能

New Relicプラットフォームは、6つの主要な監視領域をカバーしています。

アプリケーションパフォーマンス監視(APM)

APMは、Webアプリケーションやバックエンドサービスのパフォーマンスを詳細に追跡します。レスポンス時間、スループット、エラー率という「ゴールデンシグナル」を中心に、アプリケーションの健全性を評価します。

コードレベルの可視性により、パフォーマンスのボトルネックを特定し、データベースクエリの最適化やメモリ使用量の改善に必要な情報を提供します。マイクロサービス環境では、分散トレーシング機能により、リクエストがサービス間をどのように流れているかを追跡できます。

インフラストラクチャ監視

サーバー、コンテナ、クラウドインフラストラクチャの監視を担当します。CPU、メモリ、ディスク、ネットワークといったリソース使用率を継続的に追跡し、キャパシティプランニングと問題の早期発見を支援します。

AWS、Azure、Google Cloud Platformなどの主要クラウドプロバイダーとの統合により、クラウドネイティブな環境でも包括的な監視が可能です。

ブラウザ監視(リアルユーザーモニタリング)

実際のユーザーがWebサイトを利用している際のパフォーマンスを測定します。ページ読み込み時間、Core Web Vitals、JavaScriptエラーなどを追跡し、ユーザー体験の質を定量的に評価できます。

地理的な配信パフォーマンスやデバイス別の性能差なども把握でき、フロントエンド最適化の優先順位を決定する際の重要な指標となります。

モバイル監視

iOSおよびAndroidアプリケーションのパフォーマンスとクラッシュレポートを提供します。アプリの起動時間、ネットワークパフォーマンス、ユーザーインタラクションの追跡により、モバイル体験の向上を支援します。

ログ管理

アプリケーションとインフラストラクチャから生成されるログを一元的に収集、解析します。APMやインフラストラクチャ監視のデータと関連付けることで、問題の根本原因をより迅速に特定できます。

Synthetics監視

スクリプト化されたテストによる予防的監視を実現します。実際のユーザーがアクセスする前に、APIエンドポイントやWebサイトの可用性とパフォーマンスを継続的にチェックします。

New Relicの動作原理

New Relicのデータ収集から可視化までの流れは、以下の5つのステップで構成されています。

データ収集段階では、アプリケーションやインフラストラクチャにインストールされたエージェントが、テレメトリデータを継続的に収集します。エージェントは軽量で、本番環境での使用を前提として設計されています。

データ取り込み段階では、収集されたテレメトリデータがAPIを通じてNew Relicプラットフォームに送信されます。データは暗号化され、安全に転送されます。

データ処理段階では、生データが処理、分析され、クエリ可能な形式で保存されます。この段階で、異常検知やパターン分析などの高度な分析が実行されます。

可視化段階では、処理されたデータがダッシュボード、チャート、アラートとして表示されます。ユーザーは直感的なインターフェースを通じて、システムの状態を把握できます。

分析・アラート段階では、組み込まれた分析機能により、パターンや異常が識別され、設定された閾値に基づいてチームに通知されます。

組織が得られる主要なメリット

New Relicの導入により、組織は以下のような具体的なメリットを得られます。

問題解決の高速化

平均検知時間(MTTD)と平均復旧時間(MTTR)の大幅な短縮を実現します。統合されたダッシュボードと高度な分析機能により、問題の特定から解決までの時間を従来の数分の一に短縮できるケースも珍しくありません。

ユーザー体験の向上

リアルユーザーモニタリングとSynthetics監視により、顧客が実際に体験するパフォーマンスを継続的に把握できます。問題が顧客に影響を与える前に検知し、予防的な対応が可能になります。

コスト最適化

リソース使用率の詳細な分析により、過剰にプロビジョニングされたインフラストラクチャや非効率なコード部分を特定できます。多くの組織で、インフラストラクチャコストの10-30%削減を実現しています。

チーム間の協力促進

開発チームと運用チーム間でのデータ共有と可視性の向上により、DevOpsの実践が促進されます。共通のダッシュボードと指標により、チーム間のコミュニケーションが改善されます。

スケーラビリティサポート

システムの成長に合わせて監視能力も拡張できるため、スタートアップから大企業まで、あらゆる規模の組織で活用可能です。

まとめ

New Relicは、現代の複雑なIT環境において、システムの可視性と制御を取り戻すための包括的なソリューションです。単一のプラットフォームでアプリケーションからインフラストラクチャまでを監視し、データドリブンな意思決定を支援します。

次のステップとして、実際にNew Relicアカウントの設定方法と基本的な使い方を学んでいきましょう。アカウント作成からAPI キーの管理まで、実践的な手順を詳しく解説していきます。


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