AWS ネットワーキング完全ガイド - クラウドネットワーク設計の体系的学習
AWSクラウドでのネットワーキング設計は、現代のエンタープライズITアーキテクチャにおいて極めて重要な要素です。本ガイドでは、AWS認定試験での出題頻度が高く、実際の企業環境で活用されるネットワーキングサービスを体系的に整理し、段階的な学習を可能にします。
AWSネットワーキングサービス全体像
AWSが提供するネットワーキングサービスは、基礎的なVPC構成から高度なハイブリッドクラウド接続まで、幅広いユースケースをカバーしています。これらのサービスを適切に理解し組み合わせることで、スケーラブルで安全なクラウドインフラストラクチャを構築できます。
主要サービス分類
AWSネットワーキングサービスは、その機能と用途に基づいて以下の4つのカテゴリに分類できます。
学習パス設計
AWS認定試験での出題傾向と実務での重要度を考慮し、以下の学習パスを推奨します。各段階で必要な知識を体系的に習得できるよう構成されています。
Stage 1: 基礎知識習得
VPC基礎・接続性の理解
- VPC、サブネット、ルーティングテーブルの基本概念
- Internet Gateway、NAT Gateway/Instanceの使い分け
- Security GroupとNetwork ACLの適切な設定
- VPC Flow Logsによる通信分析
この段階では、AWSネットワーキングの基盤となるVPCの仕組みを完全に理解することが重要です。特に、パブリックサブネットとプライベートサブネットの違い、ルーティングテーブルの動作原理、セキュリティグループの状態管理について深く学習します。
Stage 2: サービス別専門知識
主要接続サービスの習得 各サービスの特徴、適用シナリオ、設定方法を個別に学習します。
- Transit Gateway: 大規模VPC間接続とルーティング制御
- PrivateLink: セキュアなサービス間通信の実現
- Client VPN: リモートアクセスの設計と管理
- Direct Connect: 専用線接続による高帯域幅通信
- Site-to-Site VPN: ハイブリッドクラウドの基本接続
Stage 3: アーキテクチャ設計
統合設計とベストプラクティス
- 企業規模別アーキテクチャパターン
- コスト最適化戦略
- セキュリティ・コンプライアンス対応
- 監視・運用設計
サービス選択の決定フローチャート
適切なネットワーキングサービスを選択するためのフローチャートです。要件に応じて最適なソリューションを特定できます。
サービス比較表
主要ネットワーキングサービスの特徴を比較し、適切な選択を支援します。
サービス | 接続タイプ | スケーラビリティ | 帯域幅 | 主な用途 | コスト |
---|---|---|---|---|---|
VPC Peering | 1対1接続 | 125接続/VPC | 制限なし | 少数VPC接続 | データ転送のみ |
Transit Gateway | ハブ・スポーク | 5,000 VPC | 最大50Gbps/接続 | 大規模VPC接続 | 時間+データ転送 |
Direct Connect | 専用線 | 複数VIF | 50Mbps-100Gbps | 本格ハイブリッド | ポート+データ転送 |
Site-to-Site VPN | IPsecトンネル | 複数接続 | 1.25Gbps/トンネル | 基本ハイブリッド | 時間+データ転送 |
Client VPN | SSL/TLS | 20,000同時接続 | 接続数・性能依存 | リモートアクセス | 時間+接続数 |
PrivateLink | エンドポイント | サービス単位 | 高(自動スケール) | プライベート通信 | 時間+データ処理 |
選択基準
小規模環境(VPC数:2-5個)
- VPC Peering: シンプルな1対1接続
- Site-to-Site VPN: 基本的なハイブリッド接続
中規模環境(VPC数:5-20個)
- Transit Gateway: 中央集約管理
- Direct Connect: 安定した専用線接続
大規模環境(VPC数:20個以上)
- Transit Gateway + Direct Connect: スケーラブルなアーキテクチャ
- PrivateLink: セキュアなサービス間通信
AWS認定試験対策ポイント
Solutions Architect Associate
- VPCの基本概念とルーティング
- NAT Gateway vs NAT Instance
- Security GroupとNACLの違い
- VPC PeeringとTransit Gatewayの選択
Solutions Architect Professional
- 複雑なハイブリッドアーキテクチャ設計
- Direct Connect Gatewayの活用
- PrivateLinkによるサービス統合
- 大規模環境でのネットワーク設計
Advanced Networking Specialty
- BGPルーティング設計
- VPN接続の冗長性設計
- ネットワークセキュリティの深層防御
- 高可用性・災害復旧設計
頻出問題パターン
接続方式の選択問題 「複数のVPCを接続し、将来的な拡張性を考慮した設計は?」 → Transit Gatewayが正解
セキュリティ要件問題 「S3へのアクセスでインターネットを経由したくない場合は?」 → VPC Endpoint(Gateway Endpoint)が正解
ハイブリッド接続問題 「オンプレミスから複数リージョンのVPCにアクセスする設計は?」 → Direct Connect + Direct Connect Gatewayが正解
学習コンテンツ一覧
基礎編
- VPC基礎・接続性ガイド
- VPC、サブネット、ルーティングの基本
- Internet Gateway、NAT Gateway/Instance
- Security GroupとNetwork ACL
サービス別詳細編
- アーキテクチャ設計とルーティング戦略
- 大規模環境での実装パターン
- Interface/Gateway/GWLB エンドポイント
- エンドポイントサービス設計
- 認証方式と設定管理
- セキュリティとアクセス制御
- VPN設定とBGPルーティング
- 冗長性と高可用性設計
- 専用線接続の基礎から実装まで
- ハイブリッドクラウド構築パターン
実践編
- 各接続方式の詳細比較
- 企業規模別推奨アーキテクチャ
- CloudWatch・Flow Logs活用
- トラブルシューティング手法
実装時の注意点
セキュリティ考慮事項
- 最小権限の原則に基づくアクセス制御
- 暗号化の適切な実装(MACsec、IPsec)
- 監査ログの設定と分析
コスト最適化
- 適切な帯域幅選択
- データ転送パターンの分析
- リザーブドキャパシティの活用
運用性の確保
- 自動化によるヒューマンエラー削減
- 監視とアラートの適切な設定
- ドキュメント化と知識共有
AWSネットワーキングの習得は段階的なアプローチが重要です。基礎をしっかりと理解した上で、各サービスの特徴を学び、最終的に統合的なアーキテクチャ設計能力を身につけていきましょう。