AWS API Gateway 概要 - APIゲートウェイの基本と設計

AWS API Gatewayは、Webアプリケーションやモバイルアプリが必要とするAPIを簡単に作成・管理できるフルマネージドサービスです。従来サーバーで行っていたAPI処理を、AWSが代わりに処理してくれるため、運用負荷を大幅に削減できます。

この記事では、API Gatewayの基本概念から実際の設計パターンまで、初心者にも分かりやすく解説します。

API Gatewayとは

基本的な役割

API Gatewayは、Webアプリケーションとバックエンドサービス間の「仲介役」として機能します。クライアントからのリクエストを受け取り、適切なバックエンドサービスに転送し、レスポンスを返す役割を担います。

主な機能

  • API管理: APIの作成、公開、バージョン管理
  • トラフィック制御: リクエスト数の制限とスロットリング
  • 認証・認可: APIアクセスのセキュリティ制御
  • データ変換: リクエスト・レスポンスの形式変換
  • 監視・ログ: APIの使用状況やエラーの監視

API Gatewayの種類

AWS API Gatewayには3つのタイプがあり、用途に応じて選択できます。

タイプ用途特徴コスト
REST API一般的なWebAPI豊富な機能、柔軟性が高い
HTTP APIシンプルなAPI高性能、低レイテンシ
WebSocket APIリアルタイム通信双方向通信、チャット等

選択の目安

  • 複雑なAPI処理が必要 → REST API
  • シンプルで高速なAPIが必要 → HTTP API
  • リアルタイム通信が必要 → WebSocket API

API Gatewayのアーキテクチャ

基本的な構成

API Gatewayは以下の要素で構成されます。

主要コンポーネント

  • API Gateway: リクエストの受付とルーティング
  • バックエンドサービス: Lambda、EC2、RDS等の実際の処理を行うサービス
  • 認証: API キーやIAMロールによるアクセス制御
  • ステージ: 開発・テスト・本番等の環境管理

統合パターン

API Gatewayは様々なAWSサービスと連携できます。

Lambda統合 最も一般的なパターンで、サーバーレスなAPI構築が可能です。

bash
# AWSコンソールでの設定手順(概要)
1. API Gatewayでリソース作成
2. メソッド(GET、POST等)を追加
3. 統合タイプでLambdaを選択
4. 対象のLambda関数を指定

HTTP統合 既存のWebサービスやEC2上のアプリケーションとの連携に使用します。

認証とセキュリティ

認証方法の比較

API Gatewayでは複数の認証方法を選択できます。

認証方式適用シナリオ複雑さコスト
API Keyシンプルなアクセス制御
IAM認証AWS内部サービス間
Cognitoエンドユーザー認証
Lambda Authorizerカスタム認証ロジック

セキュリティ設定のポイント

API Key使用時の注意

  • クライアント側でのAPI Key保護
  • 定期的なローテーション
  • 使用量制限の設定

HTTPS強制 API Gatewayは標準でHTTPS通信をサポートします。

bash
# CLIでHTTPS強制設定確認
aws apigateway get-rest-api --rest-api-id your-api-id

パフォーマンス最適化

キャッシュの活用

API Gatewayはレスポンスキャッシュ機能を提供しています。

キャッシュの効果

  • レスポンス時間短縮
  • バックエンドサーバー負荷軽減
  • コスト削減(Lambda実行回数減)

キャッシュ設定の考慮事項

  • キャッシュキーの設計
  • TTL(Time To Live)の適切な設定
  • キャッシュ無効化のタイミング

スロットリング設定

Usage Plans APIの使用量を制御し、サービス品質を保つ仕組みです。

  • バーストリミット: 短期間での大量リクエスト制御
  • レートリミット: 持続的なリクエスト数制御
  • クォータ: 月間・日間の使用量制限

運用と監視

CloudWatch統合

API Gatewayは自動的に以下のメトリクスを収集します。

主要メトリクス

  • リクエスト数
  • レスポンス時間
  • エラー率(4xx、5xx)
  • キャッシュヒット率

ログ設定

アクセスログ リクエストの詳細情報を記録できます。

bash
# CloudWatch Logsでアクセスログ確認例
aws logs describe-log-groups --log-group-name-prefix API-Gateway-Execution-Logs

実際の設計パターン

サーバーレスWebアプリケーション

このパターンでは、フロントエンドはS3、APIはAPI Gateway + Lambda、データベースはDynamoDBの組み合わせで構成します。

マイクロサービス統合

複数のマイクロサービスを単一のAPIエンドポイントとして公開できます。

メリット

  • クライアント側の複雑性軽減
  • 統一されたAPI仕様
  • 横断的な関心事(認証、ログ等)の一元管理

コスト最適化

料金体系の理解

REST API料金

  • API呼び出し: 1百万回あたり$3.50~
  • データ転送: 1GBあたり$0.09~

HTTP API料金

  • API呼び出し: 1百万回あたり$1.00~
  • データ転送: REST APIと同等

最適化手法

HTTP APIの活用 シンプルなユースケースではHTTP APIを選択することでコストを約70%削減できます。

キャッシュ活用 頻繁にアクセスされるデータはキャッシュすることで、バックエンド処理コストを削減できます。

まとめ

API Gatewayは、現代のWebアプリケーション開発において重要な役割を果たすサービスです。適切な設計により、セキュアで高性能なAPI基盤を短期間で構築できます。

導入時の重要ポイント

  1. 要件に応じたAPIタイプの選択
  2. 適切な認証方式の設定
  3. パフォーマンスとコストのバランス
  4. 監視・運用体制の確立

これらの要素を総合的に検討することで、スケーラブルで運用しやすいAPI環境を実現できます。