AWS Cost Explorer基本概念 - サービス概要と主要機能の理解
AWS Cost Explorerは、AWSの支出を分析・可視化し、コスト最適化の機会を発見するためのWebベースサービスです。多くの組織がCost Explorerを活用することで平均15-20%のコスト削減を実現しており、効果的な分析手法を身につけることで大幅なクラウド支出の削減が可能になります。
Cost Explorerとは
コスト最適化における役割
Cost Explorerは、コスト削減の発見ツールとして機能します。無駄なリソースの特定、使用パターンの分析、最適化の優先順位付けなど、具体的なコスト削減アクションの起点となります。
コスト削減に活用できる主要データ
Cost Explorerが提供するデータを活用することで、以下のようなコスト削減アクションを実行できます。
活用可能な削減手法:
- 無駄リソース特定: 使用率0%のインスタンスや未使用のストレージを発見
- サイズ最適化: オーバープロビジョニングされたリソースの適正化
- 予約購入計画: 安定的な使用パターンに対する予約インスタンス適用
- スケジュール最適化: 開発環境の夜間・週末停止による30-50%削減
データの活用特性:
- 分析期間: 過去13ヶ月のトレンド分析でパターン把握
- 粒度選択: 月次分析でトレンド把握、日次分析で詳細調査
- リアルタイム性: 前日の使用状況が翌日に反映(迅速な対応可能)
主要機能
コスト削減発見機能
Cost Explorerの最大の価値は、コスト削減機会の発見にあります。多角的な分析により、見落としがちな無駄や最適化ポイントを特定し、具体的な削減アクションに繋げることができます。
主要な削減機会発見手法
無駄リソース特定:
- 使用率0%のEC2インスタンスやRDSインスタンス発見
- 未使用のEBSボリューム、Elastic IP、ロードバランサー特定
- アタッチされていないEBSボリュームの検出
サイジング最適化:
- CPU使用率が常に低いインスタンスの過剰プロビジョニング発見
- メモリ使用量に対して過大なインスタンスタイプの特定
- ストレージ使用量に対する過剰な容量設定の検出
購入オプション最適化:
- 安定稼働リソースに対する予約インスタンス適用機会
- Savings Plans適用による割引率向上の可能性
- スポットインスタンス活用による大幅コスト削減機会
利用パターン最適化:
- 開発環境の夜間・週末停止による30-50%削減機会
- 季節性のあるワークロードのスケーリング最適化
- データ転送コスト削減のためのアーキテクチャ見直し機会
効果的な分析アプローチ
削減機会を見逃さないための体系的な分析手法を紹介します。
段階的分析手法:
- 全体像把握: 月次総コストとサービス別分布の確認
- 高インパクト特定: コストの80%を占めるサービスに集中
- リソース分析: 個別リソースレベルでの使用状況詳細確認
- 最適化評価: 削減可能性と実装コストのバランス評価
- 実行計画: 短期・中期・長期の削減ロードマップ策定
コスト削減レポート作成
効果的な削減提案レポート
ステークホルダーに響く削減提案を作成するための可視化手法を解説します。
削減インパクト可視化:
- 現状コスト vs 最適化後コスト: 削減効果の明確な表示
- 月次削減トレンド: 削減施策の継続的効果を示すグラフ
- ROI分析チャート: 投資対効果の視覚的表現
優先度マトリックス:
- 削減効果 vs 実装難易度: 取り組むべき施策の優先順位
- リスク vs リターン: 各削減施策の評価軸
- 短期 vs 長期効果: 時系列での効果発現タイミング
部門別削減レポート
組織の各部門に応じた削減レポートで、責任の明確化と削減促進を実現します。
部門別レポート要素:
- 現状分析: 部門別コスト分布と前月比較
- 削減機会: 部門固有の最適化ポイント
- 削減目標: 達成可能な削減率と金額目標
- アクションプラン: 具体的な削減手順と担当者
- 効果測定: 削減施策の成果トラッキング方法
削減効果予測
削減施策の効果を事前に予測し、投資判断の精度を向上させます。
削減効果シミュレーション
各削減施策の効果を定量的に評価し、最適な実施計画を策定します。
予測活用例:
- 予約インスタンス効果: 1年・3年コミットによる割引効果の比較
- サイズダウン効果: インスタンスサイズ変更による月次削減額
- スケジュール停止効果: 開発環境停止による年間削減額
- ストレージ最適化: S3ライフサイクル適用による長期削減効果
削減計画立案:
- 四半期別削減目標の設定
- 累積削減効果の可視化
- 削減率の現実的な目標設定
料金体系と制限事項
料金体系
Cost Explorerの利用料金は、使用する機能に応じて課金される従量制です。
WebUI利用
- 基本機能: 無料
- 月次データの表示
- 基本的なフィルタリング
- 標準レポート
API利用
- 料金: APIリクエスト1件あたり $0.01
- 対象: Cost Explorer APIの全エンドポイント
- 課金単位: リクエスト数ベース
高度な機能
- 予約インスタンス推奨: 無料
- Savings Plans推奨: 無料
- Right Sizing推奨: 無料
制限事項
データ制限
- データ保持期間: 13ヶ月
- データ更新: 24時間遅延
- 最小集計単位: 1日
API制限
- リクエスト制限: アカウントあたり毎秒20リクエスト
- 同時接続数: 制限あり(具体的な値は非公開)
- レスポンス制限: 1回のAPIコールで取得可能なデータ量に上限
機能制限
- 予測期間: 最大3ヶ月
- カスタムディメンション: 作成不可(既定のディメンションのみ使用可能)
- リアルタイム監視: 不可(日次更新のみ)
他サービスとの比較・連携
AWS Budgetsとの連携
連携のメリット:
- Cost Explorerの分析結果を基にしたより精密な予算設定
- 実績と予算の継続的な比較・調整
- 異常なコスト増加の早期発見
CloudWatch との違い
項目 | Cost Explorer | CloudWatch |
---|---|---|
主要目的 | コスト分析・最適化 | パフォーマンス監視 |
データタイプ | 課金・コストデータ | メトリクス・ログデータ |
更新頻度 | 日次 | リアルタイム〜数分 |
保持期間 | 13ヶ月 | メトリクスにより異なる |
料金 | API使用時のみ課金 | メトリクス・ログ保存で課金 |
サードパーティーツールとの比較
Cost Explorerの優位性:
- AWS純正のためデータ精度が高い
- 他のAWSサービスとの深い連携
- 追加のデータ連携設定が不要
サードパーティーツールの優位性:
- マルチクラウド対応
- より高度な分析機能
- カスタムダッシュボード作成の自由度
利用開始前の準備
必要な権限
Cost Explorerを効果的に利用するために必要なIAM権限を整理します。
基本的な表示権限
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": [
"ce:GetCostAndUsage",
"ce:GetDimensionValues",
"ce:GetReservationCoverage",
"ce:GetReservationPurchaseRecommendation",
"ce:GetReservationUtilization",
"ce:GetUsageForecast"
],
"Resource": "*"
}
]
}
API利用権限
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": [
"ce:*"
],
"Resource": "*"
}
]
}
タグ戦略の準備
効果的なコスト分析のためには、適切なタグ戦略の策定が重要です。
推奨タグ構造
- Project: プロジェクト識別
- Environment: 環境区分(dev, staging, prod)
- Owner: 責任者・チーム
- CostCenter: コストセンター
- Application: アプリケーション名
タグの適用方針
- 必須タグの定義: 組織で統一して適用するタグ
- 命名規則の策定: 一貫性のあるタグ値の設定
- 自動タグ付け: AWS Config Rulesやタグポリシーの活用
- 定期監査: タグ付与状況の継続的な確認
まとめ
AWS Cost Explorerは、AWSコスト管理の基盤となる重要なサービスです。基本概念を理解し、適切な準備を行うことで、効果的なコスト分析と最適化を実現できます。
重要なポイント
- 段階的活用: WebUIから開始してAPI活用へと段階的にスキルアップ
- 継続的分析: 定期的な分析により効果的なコスト管理を実現
- 他サービス連携: AWS BudgetsやTrusted Advisorとの連携で包括的管理
- 組織的取り組み: タグ戦略など組織レベルでの標準化が重要