AWS Trusted Advisor基本概念 - 5つのカテゴリとサービス理解

AWS Trusted Advisorは、AWS環境のコスト最適化機会を自動発見し、具体的な削減施策を推奨するサービスです。コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、復旧力、運用の優秀性の5つの観点から、実行可能な改善提案を提供します。

Trusted Advisorとは

サービスの位置づけ

Trusted Advisorは、AWSの豊富なコスト最適化ノウハウを自動化したコンサルティングサービスです。24時間365日、組織のAWS環境を監視し、具体的なコスト削減機会と実行方法を提案します。

Trusted AdvisorはAWS環境を分析し、コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、復旧力、運用の優秀性の5つの観点から推奨事項を提供します。無駄リソースの特定・削減、セキュリティ向上、パフォーマンス最適化、可用性強化、運用効率向上を通じて、実装・改善に導きます。

基本的な仕組み

Trusted Advisorは、AWSアカウント内のリソース設定と使用状況を自動的に分析し、事前定義されたベストプラクティスルールに基づいて推奨事項を生成します。

分析プロセス:

  1. データ収集: AWS環境の設定・使用状況データを自動収集
  2. ルール適用: ベストプラクティスルールセットに基づく分析
  3. 推奨事項生成: 改善提案と優先度の決定
  4. レポート提供: WebUIとAPIでの結果提供

Trusted Advisorの5つのカテゴリー

Trusted Advisorは、AWS環境を5つの重要な角度からチェックし、改善提案を行います。初心者の方はまず、以下の全体像を把握してから各カテゴリーを理解していきましょう。

1. コスト最適化 (Cost Optimization)

即座に実行可能なコスト削減機会を特定し、具体的な削減金額と実装手順を提供します。多くの組織がTrusted Advisorの推奨事項を実装することで、平均15-30%のコスト削減を達成しています。

初心者にもわかりやすいチェック項目

すぐに削減できる無駄リソース:

  • 未使用のEBSボリューム: 何も使っていないストレージがあると料金だけが発生
  • 未割り当てのElastic IP: 使っていないIPアドレスに料金がかかる
  • 📉 低使用率のEC2インスタンス: ほとんど使わないサーバーを小さくするか停止
  • 🗑️ 古いEBSスナップショット: 不要なバックアップデータの削除

長期割引の活用提案:

  • 💵 Reserved Instance購入機会: 継続使用するサーバーで大幅な節約が可能
  • 📈 具体的な削減金額: 「月額10万円が7万円になります」のような具体的表示
  • ⚙️ 適切な設定推奨: 1年か3年か、一括か分割かの選択アドバイス

初心者にもわかりやすい実例:

💰 コスト削減の具体例

現状: 24時間稼働のEC2サーバー(月額15万円)
Trusted Advisorからの提案: 「このサーバー、Reserved Instanceにすると月額10万円になります」
節約効果: 月額5万円、年間60万円の節約!
実行手順: AWSコンソールでクリックするだけ

2. セキュリティ (Security)

セキュリティ設定の改善点と脆弱性対策を提案します。

主要なチェック項目

アクセス制御:

  • セキュリティグループの設定確認
  • IAM使用状況とアクセス権限
  • MFA(多要素認証)設定状況

データ保護:

  • S3バケットパブリック読み取り権限
  • EBSスナップショットパブリック共有
  • RDSセキュリティグループ設定

危険な設定の発見例:

🔒 セキュリティリスクの発見

危険な状況: 「世界中からSSHログインが可能な状態」
Trusted Advisorの警告: 「このサーバー、不正アクセスされるかもしれません」
解決方法: 自分の会社のIPアドレスからだけアクセスできるように制限
安全度: ハッカーの侵入リスクを大幅に減少!

3. パフォーマンス (Performance)

システムパフォーマンスの改善提案を行います。

主要なチェック項目

コンピューティング最適化:

  • EC2インスタンスタイプの適正性
  • EBSボリューム設定の最適化
  • CloudFrontの活用機会

ネットワーク最適化:

  • Route 53レイテンシー最適化
  • ELB設定の改善提案
  • CloudFrontディストリビューション設定

4. 復旧力 (Resilience)

システムの復旧力と障害への対応能力向上を支援します。

主要なチェック項目

冗長性確保:

  • Multi-AZ設定の推奨
  • バックアップ設定の確認
  • ELBヘルスチェック設定

災害復旧:

  • スナップショット取得状況
  • クロスリージョンバックアップ
  • Auto Scalingグループ設定

5. 運用の優秀性 (Operational Excellence)

運用効率とベストプラクティスの導入を支援し、サービス制限の監視も含む包括的な運用改善を提案します。

主要なチェック項目

サービス制限監視:

  • EC2インスタンス数の上限監視
  • EBSボリューム容量制限の確認
  • VPC関連リソース制限の追跡

運用最適化:

  • リソース使用パターンの分析
  • 運用効率改善の提案
  • ベストプラクティス適用の推奨

事前警告システム:

  • 制限値の80%到達時のアラート
  • 制限引き上げ申請の案内
  • サービス拡張計画への助言

サポートプラン別機能

Basic & Developer Support

利用可能機能:

  • 基本チェック(56項目)
  • サービス制限チェック
  • セキュリティ推奨事項(限定的)

制限事項:

  • チェック項目が限定的
  • APIアクセス不可
  • 詳細な分析機能なし

Business Support

追加機能:

  • 全チェック項目(482項目)
  • Support API アクセス
  • プログラマティックアクセス
  • 週次更新

実用性の向上: Business Supportでは、全482項目のTrusted Advisorチェックにアクセスできるため、より詳細な分析と自動化が可能になります。Basic/Developer Supportの56項目から大幅に増加し、包括的な最適化が実現できます。API経由でチェック結果を定期的に取得し、独自のダッシュボードや監視システムとの統合ができます。

Enterprise Support

高度な機能:

  • Trusted Advisor Priority: 組織のコンテキストに基づいた優先順位付きの推奨事項
  • コンテキスト駆動推奨: ビジネス情報を踏まえたカスタマイズされた改善提案
  • 専任TAM連携: Technical Account Managerからの直接的な優先順位推奨
  • 拡張コラボレーション: 組織全体の可視性と連携機能の強化
  • リアルタイム監視: 24時間継続監視と即座のアラート通知

比較表:

機能Basic/DeveloperBusinessEnterprise
チェック項目数56項目482項目482項目
API アクセス
更新頻度週次週次リアルタイム
カスタムチェック
統合ダッシュボード限定的
Trusted Advisor Priority
専任サポートTAM + 優先順位推奨

基本的な使用方法

Webコンソールでの確認

ダッシュボードの見方

初心者の方へのポイント: まずは赤色のアラートから確認しましょう。特にセキュリティ関連は放置すると危険です。

推奨事項の優先度

ステータス表示:

  • 🔴 Red (Action Recommended): 即座の対応が必要
  • 🟡 Yellow (Investigation Recommended): 調査・検討が推奨
  • 🟢 Green (No Problem Detected): 問題なし

実装プロセス:

  1. 高優先度項目の確認: 赤色アラートから対応
  2. 影響度評価: ビジネスへの影響を評価
  3. 実装計画: 段階的な改善計画策定
  4. 効果測定: 実装後の効果確認

APIによる活用

Business Support以上では、AWS Support APIを使用してTrusted Advisorの結果をプログラムで取得できます。これにより、定期的な監視や独自のレポート生成、他のシステムとの統合が可能になります。

API活用例:

  • チェック結果の定期的な自動取得
  • カスタムダッシュボードでの可視化
  • アラート通知システムとの連携
  • コスト削減効果の自動計算とレポート生成

実践的な活用戦略

段階的実装アプローチ

初心者の方へのアドバイス: 無理して一度に全部をやろうとしないでください。Phase 1からスタートして、慣れてきたら次のフェーズに進みましょう。

組織での活用

推奨運用体制:

  • 週次レビュー: 「今週は何か新しい改善点があるかな?」の確認
  • 月次分析: 実装効果の測定
  • 四半期評価: 戦略的改善計画の見直し

まとめ

AWS Trusted Advisorは、AWS環境の継続的な最適化を支援する重要なサービスです。5つのカテゴリを理解し、組織のサポートプランに応じて効果的に活用することで、コスト削減とセキュリティ向上を実現できます。

活用のポイント

  1. 段階的実装: 高優先度項目から順次対応
  2. 継続的監視: 定期的なチェックと改善
  3. 自動化活用: Business Support以上でのAPI活用
  4. 組織的取り組み: チーム全体での最適化文化醸成